「何時間分」で「いくらか」を明らかにすれば、見込残業代を設定できる・・・という話はコチラでしました。
ちゃんと設定しないと未払い扱いになりますよ…という怖い話込みで。
ただ、そんなこと言われても
「具体的にどうしたらいいか分からないヨォ!」
ということがあるかと思います。
ご安心ください。この記事では、「計算方法」について解説します。
例えば、月給30万円の人が1時間残業すると、残業代はいくらになるでしょう?
・・・
はい。1時間当たりの単価(時給)が分からないと、出せませんね。
では、月給で働く人の時給換算はどうやって求めれば良いでしょう?
これは、1か月で働く時間(所定労働時間)が分かっていれば出せますね。
例えば160時間としましょう。
30万円÷160時間=1,875円となります。
1時間残業すると1.25倍払ですから、1,875×1.25≒2,344円になります。
細かな話ですが、2,343円は推奨しません。小数点以下は四捨五入ではなく、切り上げます。
例えば最低賃金1,113円×1.25=1391.25円 これを1,391円とすると、1.25で割り戻したときに1112.8円となり、最低賃金を下回るからです。最低賃金法違反ですし、助成金の不支給事由にもなります。(メッチャ早口)
しかしこの方法だと、曜日の関係で所定労働時間が毎月変わる場合は、時給も毎月変わるのか…?という疑問が出てきます。
それは残業代の計算がとても煩雑になりますから
「年間単位の給与」を「年間単位の所定労働時間」で割ることで、時給を求めることができます。
月給30万円ならば年収は360万円。
1日8時間労働で年間休日115日なら、2,000時間 ※(365-115)×8
つまり、時給は360万÷2,000=1,800円・・・と求まります。
この人が残業した場合は、1,800円×1.25=2,250円支払わなければなりません。
それでは、ここからが本題です。
「月給30万円の中に、すでに見込残業が含まれている」場合を考えてみます。
例として、見込残業が30時間分ついているとします。
先ほどの年間単位の時間とお金の関係を考え直してみると…
360万円には2,000時間だけでなく、30時間×1.25×12か月=450時間分も含んでいる、と解釈できます。
したがって時給は、360万÷2,450=1,469.388円(ここでは小数点以下3位まで採用します。)
1か月平均の所定労働時間は166.666時間ですので、
1,469.388×166.666≒244,898円
一方、残業代は
30×1.25×1,469.388=55,102円
244,898円+55,102円=300,000円
正しく求めることができました!!!!
・・・・・・こんな計算いちいちやってられないヨォ!!!
というあなたさんには、
計算シートを差し上げます。コチラからダウンロードしてお使いください。
この計算シートは、社会保険料や所得税の金額表や、従業員の個人情報と連動させ、エクセルで給与計算を実施するときのデータ一部分を抜粋したものです。(おっと、つい早口に)
むかしむかしあるところに
「見込残業代の内訳が分からないヨォ!!!」
という会社がありました。
見込残業代の内訳が分からないので、雇用契約書には「月給28万円。見込残業代2万円。」としか書いてありませんでした。
ある日、ちょっとネットで労働法を調べた社員から
「何時間分見込んでいるんですか?」
と聞かれた社長は
「?? 2万円固定だよ??」
と答えてしまいました。その結果
「あぁ、この会社は残業代を計算することができないから、どれだけ働いてもサービス残業にしかならないんだな」
と悟った社員は辞めてしまいました。
すると、その社員と仲のいい社員まで、「やりたいことができたんで」などと言って辞めてしまいました。
風のうわさでは、忙しい月には残業代が出る同業他社で元気やっているようです。
これは大変まずいので、見込残業の時間と金額を明確にして
「これからはちゃんと頑張ったら報われる会社になるよ」
というメッセージを発するお手伝いをしました。
ただ・・・正しく計算できたとしても、正しく導入できるかは別の話。それはまた今度…。
関連記事:
・「うちは見込残業なんで、追加の残業代は無いです」のロジックを組み直した話
・見込残業代を実際に導入する話
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